自筆証書というのは自分で作成した手書きの遺言です。
民法968条1項では、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」とされており、全てを自分で手書きする必要があります。
平成27年4月13日に、入院先の病院で、本件遺言の全文、同日の日付及び氏名を自書しましたが、印鑑を押していませんでした。その後、退院した5月10日に。弁護士の立ち合いのもと、押印して遺言を完成させたという事案です。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/956/089956_hanrei.pdf

日付を記載した日が遺言を実際に作成した日(押印した日)と違っても良いのかが争われたのが、この判例になります。

最高裁は、「自筆証書によって遺言をするには、真実遺言が成立した日の日付を記載しなければならない」としつつ、「しかしながら、民法968条1項が、自筆証書遺言の方式として、遺言の全文、日付及び氏名の自書並びに押印を要するとした趣旨は、遺言者の真意を確保すること等にあるところ、必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは、かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがある」として、「本件の事実関係の下では、本件遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに本件遺言が無効となるものではない」と判断しました。

自筆証書遺言は、形式面がとても重要で、要件を充たさないと無効になってしまいます。
しっかり作らないと遺言によって受け取る遺産が少なくなる相続人から争われるリスクがあります。しかし、無効かどうかの判断は事例ごとに異なりますので、弁護士への相談が不可欠です。できれば弁護士に相談のうえ公正証書遺言を作成しておくのが良いでしょう。